【作品概要】
・タイトル:Sheer Heart Attack
・アーティスト:Queen
・リリース年:1974年
・収録曲:13曲/39:09
【総評】★★★★☆
Queenの3rdアルバム。
前作と比較して聴きやすくなったという感じです。以前までのダークで耽美的な空気感が薄まりポップでキャッチーな雰囲気の曲が加わったため、さらっと全曲聴けます。(QueenⅡは完成度が凄まじいかわりに、通しで聴くと結構疲れるんですよね)
要因としては、ポップな曲を持ち味とするジョンが本作から作曲に参加していることや、そもそも様々なタイプの曲を作ろうという意図があったとも想像できます。なのでバラエティー豊かな良曲たちを1曲1曲味わうことができるのが良い点ですね。
【各曲レビュー】
1:Brighton Rock/★★★★☆
遊園地の喧騒のようなSEからいつの間にかブライアンのギターに変化するイントロでスタート。まずフレディの歌い回しが良いですね。Bメロで裏声から地声に滑らかに転換し、高揚感溢れるサビメロを堂々と歌い上げる。この一連の流れが絶品です。また間奏で三味線を彷彿とさせるギターソロが出てきますが、そこは正直長いなーという印象。むしろその前のギターとドラムが即興演奏のように絡むパートが出てくるんですけど、センス抜群でそっちのほうが聴きどころだと思っています。
2:Killer Queen/★★★★★
一言で表すと上質なポップソングなんですが、曲から漂ってくる雰囲気が独特なんですよね。なんというか上品で官能的な雰囲気が溢れているっていう感じです。その要因はフレディの歌い回しによるところが大きく、他の人じゃ絶対真似できないと思ってしまうほどで唯一無二の曲と言えるでしょう。
3:Tenement Funster/★★★★☆
ロジャーが作詞作曲ボーカルを担当。渋みのあるハスキーボイスにブライアンの哀愁漂うギターが加わり、硬派で味わい深い曲に仕上がってます。煌びやかな曲が多いQueenで、ロジャーだけが男の哀愁たっぷりな曲を作っているのが、我が道を行くみたいな感じで良いですね。
4:Flick Of The Wrist/★★★★★
サビに向かって段々明るくなる構成が印象的な曲。Aメロはヘヴィなリフにフレディの低音ボーカルさらに低音コーラスまで加わり、結構暗めの雰囲気。ここからBメロで力強い歌い回しに変化し、フレディの歌声とコーラスが順番に入る明るいサビメロに突入する流れが良いですね。個人的には、Aメロのホラーチックな雰囲気が癖強で気に入ってます。
5:Lily Of The Valley/★★★★★
QueenⅡ収録のNevermoreと同系統の曲。メロディーが美しく隠れた名バラードと言えるでしょう。フレディのボーカルもファルセットを中心に繊細な表現がされており、思わず聴き惚れてしまうような美しさを放っています。
6:Now I'm Here/★★★☆☆
どっしりとしたロックンロール曲。全体的にギターは格好良い感じで悪い曲では無いんですけど、個人的にはあんまり好きじゃないんですよね。間奏や歌メロがやや単調で地味なので、もう少しメリハリが欲しかったなというところです。
7:In The Lap Of The Gods/★★★★★
ロジャーの超高音シャウトからおどろおどろしいピアノが入ってくるイントロが強烈です。全体の印象は妖しくて変な曲といったふうで、序盤のフレディの低音ボイスもエフェクトが入っているのかいつもと雰囲気が違います。中盤以降は、同じコーラスを繰り返しているだけなんですけど、神々しい雰囲気があり不思議と惹きつけられます。
8:Stone Cold Crazy/★★★★☆
本作で一番テンポが速い疾走曲。ただ個人的には歌メロがあまり好みではないんですよね。そのかわりにブライアンがスピード感溢れるフレーズを弾きまくっているので、ギターのメロディーを追っているだけで満足できるので曲としては気に入ってます。
9:Dear Friends/★★★☆☆
5と同じくシンプルで短めのバラード曲。5と比べて派手さは無く、素朴な雰囲気ですね。まずまずといった感じ。
10:Misfire/★★★★☆
ジョン作曲のポップナンバーで、朗らかな雰囲気が漂っています。ベーシスト作ということもあって歌メロとギターの合間を縫うようにベースが入っているんですけど、しっかり耳に残る感じで良いですね。
11:Bring Back That Leroy Brown/★★★★☆
遊び心にあふれた面白い曲。2分半と短い時間の中に様々な要素が詰め込められています。基本的にスピーディーに展開していくんですけどベースソロが入っていたり、バラード調の雰囲気になったりと工夫されてるのが良いですね。個人的には、フレディが曲名を低音で歌う場面がちょっと面白くて好きです。
12:She Makes Me (Stormtrooper in Stilettos)/★★★★☆
ブライアンがボーカルをとるバラード曲。アコギのリフと湿ったような質感を持つドラムの音作りもあって神秘的な雰囲気の曲に仕上がっています。個人的には、2番のサビでさりげなく入ってくる綺麗なエレキのトーンが好きです。
13:In The Lap Of The Gods Revisited/★★★★★
アルバムの締めに相応しいバラード曲。まず1番と2番で聴けるファルセットを基調とした歌い回しが、相変わらず美しいです。さらに終盤にライブ演奏のような大合唱でサビを何度も繰り返すところが良いんですよね。熱いものがこみ上げてくると同時に、ああもう終わりなんだなというような感傷的な気持ちになります。いずれにしても、最高の幕引きと言えるでしょう。