【作品概要】
・タイトル:The Game
・アーティスト:Queen
・リリース年:1980年
・収録曲:10曲/39:09
【総評】★★★☆☆
Queenの8thアルバム。
前作と比べて大きく変化した作品です。まずフレディの歌唱についてですが、鋭く力強い高音で押していくような表現が増え、逆に美しいファルセットが無くなった印象です。また演奏面ではベースラインが際立った曲が増え、ギターの音数を減らした作りになっている印象があり、独特の暗さがあります(2,3,7など)。その中でも3の完成度がずば抜けており、新しいタイプの名曲といえるでしょう。
また従来持っていた要素も健在で、ポップな1,4やドラマチックなバラード8,10の出来が良く、特に10はQueenを代表するバラードと言えるでしょう。
ただ初期Queenらしさが薄味になったぶん構成がいまいちだったり、歌メロが弱い曲が浮き彫りになりやすく完成度がばらついているため、トータルでの完成度が落ちてしまうのが残念ですね。
【各曲レビュー】
1:Play The Game/★★★★☆
フレディの歌唱が印象的なバラード曲。従来の作品では艶のあるファルセットを多用していましたが、本曲でのファルセットは優しく穏やかな発声といった感じで新鮮です。また演奏面でもドラムの湿った感触のハイハットが心地良く、ソフトで聴きやすい印象です。前半冗長な面もありますが、後半のフレディの力強いロングトーンからの盛り上がりが中々熱くて良いですね。
2:Dragon Attack/★★★☆☆
淡々と繰り返されるギターとベースのリフが印象的な曲。ドラムソロ→ベースソロの流れが格好良いですね。ただギターがイマイチかな... 節々のフレーズは良質なんですけど全体的に長ったらしい感じなので、個人的にはもう少しコンパクトにまとめてほしかったところ。
3:Another One Bites The Dust/★★★★★
ジョン作曲のファンクチックなナンバー。一見地味ですが曲構成が見事で、聴くたびに好きになりました。リズミカルなベースラインに色っぽい低音ボーカルを披露する1番から、鋭い高音で捲し立てる2番以降への流れが見事です。あえて1番でギターを弾かずにダークな雰囲気を醸し出している点もgood。また2番以降の力でねじ伏せるようなボーカルが凄まじく、圧倒されます。
4:Need Your Loving Tonight/★★★★☆
ジョンが得意とするポップナンバー。ギター、ボーカル共に軽やかで聴きやすいです。聴いてて感じたのはAメロBメロを繰り返し、サビの登場を遅らせることによって、焦らしている点です。曲名が歌われるサビ自体のインパクトはそこそこですが、そろそろ聴きたいなというタイミングで流れてくるためスッと頭に入ってくるの良いですね。
5:Crazy Little Thing Called Love/★★☆☆☆
エルヴィス・プレスリーを思わせるアコギを使用したポップナンバー。全体的にとても軽やかです。ただ歌メロの淡白さに加え、手拍子が入るパートがビミョーなこともあり、個人的にはまあまあかな...
6:Rock It (Prime Jive)/★★☆☆☆
ロジャー作のロックナンバー。再生してから1:00くらいまでのパートが素晴らしいです。ギターのアルペジオに情感たっぷりなボーカルが被さり、名曲の匂いが漂っています。ただその後の疾走パートがつまらない...歌メロに面白味がなく演奏も単調なうえ、それが終わりまで続くので、もう少しアレンジを練ってほしかったです。
7:Don't Try Suicide/★★★☆☆
ベースに乗せて低音で歌われる暗めなパートとポップで軽快な明るいパートが繰り返される曲。明暗の落差が結構激しく、メリハリがあります。間奏後やエンディングのパートなどは蛇足感もありますが、全体的な構成が練られているため聴きやすい印象です。
8:Sail Away Sweet Sister/★★★★☆
ブライアンの優しく切ない声を存分に活かしたバラードナンバー。ギタリスト作曲ということもあって、エレキのギターソロはもちろん素晴らしいんですけど、1番終了後に入るアコギの物悲しい旋律が曲にマッチしていて、味わい深いです。構成としても無駄がなく、2番でAメロを飛ばしてBメロから入いることによってアクセントがつけられている点も見逃せません。
9:Coming Soon/★★☆☆☆
ロジャー作のポップナンバー。ギターリフもボーカルもラフな感じです。楽しそうな雰囲気が漂っているのは良いんですが、歌メロ演奏共に弱く個人的にはいまいちかな...
10:Save Me/★★★★★
切なくドラマチックなバラードの名曲。まずフレディのボーカルが良いですね。AメロBメロの切ない歌唱から一転してサビでの力強い歌唱に至るまで完璧です。個人的には、2番サビでの熱いロングトーンや間奏中に入る絶妙なフェイクが特に好きです。またギターソロについてもソロ→Cメロ→ソロの2段構えの構成をとっていて、1回目のアコギを取り入れた穏やかで美しいソロと2回目の激情的なソロのどちらも素晴らしく完璧な出来栄えです。