なんでも音楽レビュー

音楽好きの凡人。アルバムの総評と1曲ごとの感想をメインに書いています。多くの曲を聴いたり書いたりして、隠れた名曲を発掘したい。「ここのメロディ良い!」とか「有名だけど私的には...」みたいな感想をメインに書くので、読んでくれた人が新たに良曲と出会ったり、少しでも共感してくれたら嬉しいなと思います。

【アルバムレビュー】Hot Space

【作品概要】 

・タイトル:Hot Space

・アーティスト:Queen  

・リリース年:1982年     

・収録曲:11曲/43:29

 

【総評】★★★☆☆

 ブラックミュージック的要素を取り入れたQueenの10thアルバム。

 幅広い音楽性を持つQueenですが、変化の大きさに当時は賛否両論だったようです。ただ改めて聴いてみるとディスコナンバーと言える曲自体は、前半の1~5で6以降はいつも通りのQueenサウンドといった印象。その中でも2,3は、ロックとディスコが上手く融合した良曲と言えるでしょう。加えて本作屈指のハードナンバーの6、味わい深いバラードの7、デヴィッド・ボウイと共作した11などの完成度が素晴らしいです。

 一方展開やアレンジの練度が不足した曲も多く、打率自体はあまり高くないのが玉に瑕ですね。特に個性のある5,10などは、もう一工夫あればという感じで惜しいですね。

 

【各曲レビュー】

1:Staying Power/★★★★☆

フレディによる異色のディスコナンバー。人工音が大胆に入り、ロック特有の生々しいバンドサウンドは跡形もありません。ただ代わりに歌もマイケルジャクソンを彷彿とさせる感じになっており、演奏にマッチしているので違和感はありません。リズミカルな「We'll work it, work it, work it」の歌詞や「Did you hear the last call, baby? You and me got staying power,」のゆっくり上昇していくメロディなど、語感や韻が考慮されているため、とてもノリやすいです。

 

2:Dancer/★★★★☆

シンセベースや電子ドラムが印象的で、フレディの乾いたファルセットやサビの甲高いコーラスの繰り返しは結構癖になります。ロック的なアプローチも健在で、間奏ではブライアンのド派手なギターソロが炸裂します。迫力満点でギタリストの意地を感じますね。

 

3:Back Chat/★★★★☆

1,2と同系統ですが、ディスコ的なアレンジは薄くロック色が強い印象です。Aメロの「Back chat, back chat」に合わせて弾かれるリフの一体感が気持ちいいです。また間奏では電子ドラムのソロが入り、そこから激しいギターソロへの流れも素晴らしい。

 

4:Body Language/★☆☆☆☆

エロティックで独特な雰囲気が漂う怪曲。個人的には歌メロや展開に面白味が無く、効果音も浮いているよう感じがするのでイマイチかな...ただジョンのベースラインは良いですね。低音で這うよなベースラインが絶妙に気持ち悪く、曲の雰囲気にピッタリです。

 

5: Action This Day/★★☆☆☆

フレディの熱唱が素晴らしいロックナンバー。ただあんまり盛り上がらないんですよね。ギターリフが大人しくドラムも終始リズムをキープし続けるだけで、演奏がやや淡白なのが要因かな...ロック的な歌唱とディスコ的な演奏面が上手く嚙み合っていない印象なので、どちらかに寄せてほしかったところ...

 

6:Put Out the Fire/★★★★★

ブライアン作のロックナンバー。力強いハイトーンボイス、ヘヴィなギターリフ、重厚かつ躍動感のあるドラミングが揃った純度100%のロックナンバーと言えるでしょう。聴きどころ満載ですが、個人的にはサビのインパクトが強烈ですね。フレディが2番の「Put Out the Fire」の部分でわざと語尾を裏返す歌い方をしていて、そこが耳に残ります。またQueenらしい美しいコーラスも健在で、フレディのボーカルと合わさることで迫力満点です。

 

7:Life Is Real (Song For Lennon)/★★★★★

1980年に凶弾に倒れたジョンレノンに捧げたバラード曲。歌詞にはレノンの生き様にフレディ自身を重ねたような内容が綴られており、語るようなボーカルからは無常観や諦念といった感情が溢れてくるようです。穏やかで時折ノスタルジックな香りが漂う曲調ですが、中盤で叫ばれる「Life Is Real」という歌詞が全てじゃないでしょうか。理不尽に対するやるせなさが伝わり、聴いていて胸が痛いです。個人的にはQueenの中でも印象深い名曲の1つです。

 

8:Calling All Girls/★★★☆☆

アコギの音が無機質でやや不気味なナンバー。効果音も耳障りで得体の知れない雰囲気があります。ただサビは結構ポップで聴きやすいですね。個人的には、良し悪しはともかく不思議な曲だなという印象です。

 

9:Las Palabras De Amor (The Words of Love)/★★★☆☆

ブライアン作曲のバラード曲。穏やかな曲調でオペラ座の夜収録のYou're My Best Friendに似た雰囲気を感じます。アコギ、コーラス、シンセなどどれも温かみのあり、リラックスして聴けます。ややインパクト不足な点は否めませんが、シンプルに良い曲です。

 

10:Cool Cat/★★★☆☆

ギターのカッティングにフレディの美声をのせたシンプルな曲。ボーカルのほとんどがファルセットで構成されており、柔らかい女性的な発声はフレディならではといった感じです。ただメロディについてはAメロ、サビなどの概念が無く即興チックに続いていく点が惜しいですね。シンプルすぎて印象が薄くなりがちなので、曲展開に工夫がほしかったかな...

 

11:Under Pressure [with David Bowie] /★★★★★

デヴィッド・ボウイとのコラボ曲。、重苦しい雰囲気の序盤から一転してドラマチックな終盤に至るまでの流れが見事な名曲です。オープニングから中盤までは、ジョンの乾いたベースラインにやや抑えめのボーカルも相まって鬱屈した雰囲気を醸し出しています。そこからホラーチックな語りが入る場面を挟んでフレディの超高音のハイトーンを皮切りに一気に明るくなります。そしてラストは個性が違う2人のボーカルを堪能できるようにそれぞれのパートに分けられ、フレディが歌う「give love~」の繰り返しからボウイの渋みのある低音で歌われる「Cause love's such an old fashioned word~」の部分では最高のカタルシスを味わえます。この暗から明への展開が神懸かっており、アルバムの締めにぴったりと言えるでしょう。

 

・作詞作曲:Freddie Mercury 1982年Hot Space収録のStaying Powerより歌詞を引用

・作詞作曲:John Deacon 1982年Hot Space収録のBack Chatより歌詞を引用

・作詞作曲:Brian May 1982年Hot Space収録のPut Out the Fireより歌詞を引用

・作詞作曲:Queen& Bowie1982年Hot Space収録のUnder Pressure [with David Bowie]より歌詞を引用