なんでも音楽レビュー

音楽好きの凡人。アルバムの総評と1曲ごとの感想をメインに書いています。多くの曲を聴いたり書いたりして、隠れた名曲を発掘したい。「ここのメロディ良い!」とか「有名だけど私的には...」みたいな感想をメインに書くので、読んでくれた人が新たに良曲と出会ったり、少しでも共感してくれたら嬉しいなと思います。

【アルバムレビュー】Jazz

【作品概要】 

・タイトル:Jazz

・アーティスト:Queen  

・リリース年:1978年     

・収録曲:13曲/44:39

 

【総評】★★★★★

 Queenの7thアルバム。

 全体的な印象としては、シンプルだった前作と比較してバラエティー豊かでメロディアスな楽曲が増えた印象です。3rd、4thアルバム程の華やかさはありませんが、コーラスの厚みや多彩さはいかにもQueenといった趣で、個人的には前作よりも好みです。また演奏面では確実に進化が見られ、2,4,5,6,7などは以前よりも曲構成や緩急のつけ方がしっかり練られており、メリハリがあって聴きやすいです。

 個別の楽曲毎に見ても質が高く、特にジョン作の5,8が良いですね。なんというかジョンが作るメロディに乗るフレディの歌声が、自然体で一番素に近い感じがするんですよね。伸びやかで優雅な感じがして、とても好きです。

 Queenのアルバムの中では目立たない本作ですが、Queenらしさと楽曲の高い充実度を兼ね備えた名盤と言えるでしょう。

 

【各曲レビュー】

1:Mustapha/★★★★☆

フレディ作のアラビア語を基調としたロックナンバー。リズミカルで語感が良いため、ノリやすい印象です。また要所要所で音量が上がる演出も良く、それに合わせて聴き手のテンションも上がりますね。1曲目の掴みとしては、ばっちりです。

 

2:Fat Bottomed Girls/★★★★☆

ブライアン作の曲構成が光るロックナンバー。1番はタムを中心に叩くドラムやヘヴィなギターリフによって重苦しい雰囲気ですが、2番からシンバルを多めに叩くドラムや高音で荒々しいギターによりドラマチックな雰囲気となっています。この溜めて爆発する曲展開により、2番以降の高揚感が凄いです。また、Queenらしいの豪華なコーラスも良いですね。ただ1つ不満があるとすれば、シングル盤の間奏が短いバージョンのほうがすっきりしていて好みなので、そちらを収録して欲しかったところ。

 

3:Jealousy/★★★★☆

ピアノをバックにフレディの歌唱を堪能できるバラード曲。シタールと呼ばれる北インドの民族楽器が印象的で、曲全体に物悲しい雰囲気が漂っています。いつものコーラスは全体的に控えめですが、要所ではきちんと主張しており、終盤の盛り上がりに一役買っているのが良いですね。

 

4:Bicycle Race/★★★★★

3分強と短めですが、展開が忙しく様々な要素が詰め込まれている印象です。特にドラムのリズムチェンジが激しく、Aメロのコーラスの掛け合いに合わせて変則的に叩かれているパートが格好いいですね。その他にも楽器やコーラスが複雑に絡み合っているため聴きどころが絶えず、変態チックな演奏とポップさを兼ね備えた名曲です。

 

5:If You Can't Beat Them/★★★★★

ジョン作の爽やかなロックナンバー。終始楽し気な雰囲気が漂っており、軽快な演奏にフレディの伸びやかでリラックスしたボーカルがマッチした名曲です。ドラムの「ジャン、ジャン、ジャーン」というシンバルワークによってメリハリがついている点が良いですね。また、ラストのドラムとギターの絡みが延々と続いていくところが、格好良さと切なさが混じったような感じでとても好きです。

 

6:Let Me Entertain You/★★★★★

冒頭などで登場する「ズン・ズン」という独独のリズムが妖しさ満点で、いかにもフレディ作といった感じのロックナンバー。リズム隊による巧みな押し引きに荒々しいギター、さらにはフレディのハイテンションボーカルが主張しあいながら突き進んでいく印象で、聴いていてとても楽しいですね。また、歌詞の「We'll breakfast at Tiffany's
We'll sing to you in Japanese」の語感が気持ちいのもgood。

 

7:Dead on Time/★★★★★

ブライアン作の快速ロックナンバー。とにかく疾走感が凄まじく、Queenの楽曲の中でも体感速度はマックスと言えるでしょう。曲自体は緩急を交えて作られてはいるんですけど、急の部分が高密度なんですよね。ブライアンにしては珍しい早弾きやフレディの早口言葉よろしくマシンガンのように放たれる単語の数々など詰めこみ方がえげつないです。そんなこともあって聴いているときの快感は最高潮で、脳汁がドバドバ出ていることを実感できるレベルです。

 

8:In Only Seven Days/★★★★★

ジョン作の穏やかなバラードナンバー。ベーシスト作ということで全体的にピアノとベースの絡みが心地よく、そこに優し気でリラックスしたボーカル、温もりの中に泣きを内包したギターソロが寄り添っています。また歌詞も素晴らしく、1週間を日記形式で綴ったような感じで、短い中に甘酸っぱさや切なさを感じるような内容で、曲の雰囲気とマッチしています。洋楽は歌詞の内容をあまり気にしませんが、本曲は相乗効果を発揮している好例と言えるでしょう。

 

9:Dreamer's Ball/★★★★★

前作のMY MELANCHOLY BLUESと同じくジャズ風味のナンバー。お洒落なバーで流れていそうな前者と比較すると、本曲は南国のビーチでお酒を飲みながらギター片手に歌っているといった感じでしょうか。(例えがビミョーですいません。)聴きどころはフレディのボーカルで、まったりと低音で歌う序盤から切なげなファルセットが印象的なサビ等どれも素晴らしいです。ギターソロもジャズ風味の中に泣きが合わさったような感じでとても味があって良いですね。

 

10:Fun It/★★☆☆☆

ロジャー作曲。ドラムの音作りが独特で、フレディとロジャーが交互にボーカルをとる構成となっています。個人的には淡白すぎてイマイチですね。唯一印象に残ったのはサビメロの「time tonight」の部分が「チャイム無い」に聞こえる空耳くらいです。

 

11:Leaving Home Ain't Easy/★★★☆☆

ブライアン作曲のバラードナンバー。10と同じくやや淡白ですが、アコギが醸し出す哀愁たっぷりな雰囲気とブライアンの優し気な声がマッチしているのが良いですね。また間奏での語り部分の声が加工されていて、ちょっと怖い感じです。

 

12:Don't Stop Me Now/★★★★★

フレディ作のロックナンバー。7と同じく爽快感マックスの名曲で、歌メロが特に素晴らしいです。開放感があって語感も良く全体的に高めの音程でぐいぐい引っ張ていくような感じなので、聴いていてとても気持ち良いです。また、軽快に走るピアノやラストサビ前に登場するスピード感あるギターソロなど曲の雰囲気や盛り上げに徹したプレイも見事です。

 

13:More of That Jazz/★★★☆☆

ロジャー作のロックナンバー。ハスキーボイスとヘヴィなギターリフ、ずんぐりとしたテンポが合わさり、重厚感漂う硬派な楽曲に仕上がっています。歌メロが地味で後半飽きがきますが、そこですかさず本アルバムのメドレーが挿入されるのがナイス演出ですね。地味さを演出で無理やりカバーしている感はありますが、個人的に結構好きです。

 

・作詞作曲:Freddie Mercury 1978年Jazz収録のLet Me Entertain Youより歌詞を引用

・作詞作曲:Roger Taylor 1978年Jazz収録のFun Itより歌詞を引用