なんでも音楽レビュー

音楽好きの凡人。アルバムの総評と1曲ごとの感想をメインに書いています。多くの曲を聴いたり書いたりして、隠れた名曲を発掘したい。「ここのメロディ良い!」とか「有名だけど私的には...」みたいな感想をメインに書くので、読んでくれた人が新たに良曲と出会ったり、少しでも共感してくれたら嬉しいなと思います。

【アルバムレビュー】桜咲く街物語

【作品概要】 

・タイトル:桜咲く街物語

・アーティスト:いきものがかり

・リリース年:2007年     

・収録曲:14曲/63:58

 

【総評】★★★★☆

 いきものがかりの1stアルバム。

 一通り聴いてみて思ったのは、メロディーの完成度が高い曲が多いことですね。全曲シングルカットしても大丈夫なレベルだと思います。また歌詞もありきたりなものではなく、心情、情景共に具体的にイメージできる描写が多く、曲の世界観に入り込みやすい点もgood。強いてあげると、切なさを含んだ2 12、癒しの4、幻想的な6、細かい演奏の妙が光る7、毒性を含んだ8などが特に好きですね。

 強いて難点をあげるとすれば曲順ですかね。前半にオーソドックスな曲が並び、個性的な曲が8、10、12と後半に固まっているため、分散させたほうがアルバム全体の流れが良くなったかもしれません。

 ただ、デビュー作でここまでクオリティが高い曲を量産出来ている点は、特筆に値すると思います。

 

 

【各曲レビュー】

1:SAKURA/★★★★★

 いきものがかりのメジャーデビューシングル。吉岡と言えば、カラッとした明るい歌声がイメージされがちですが、改めてこの曲を聴いてみると印象が変わりました。侘寂を感じさせる繊細な歌唱が、儚く散っていく桜を見事に表現しています。また、哀愁漂うギターソロも素晴らしく、デビュー曲とは思えない完成度を誇っています。

 

2:KIRA★KIRA★TRAIN/★★★★★

 最終列車に乗って旅立つ間際の心境を歌った1曲。期待感と一抹の寂しさが入り混じった歌詞が好きです。ボーカルもウキウキした歌声なのに、切なくも感じられるんですよね。ラストサビで転調してからの、バンドサウンドとハーモニカが絶妙に絡む、エンディングまでの運びが見事です。

 

3:HANABI/★★★☆☆

 疾走感のある哀愁ロック。バンドサウンドが前面に押し出されており、特にBメロから入るギターが生々しい印象を与えます。ただ曲の感触は良い反面、歌メロがやや弱い気もするので、個人的には佳作かな。

 

4:君と歩いた季節/★★★★★

 アコギの音色を活かしたバラード。バンドサウンドで構成されていますが、弾き語りで演奏しても素敵な曲だと思います。曲の起伏はそれほどありませんが、穏やかで心が癒されます。初めて聴いた時のインパクトは薄い反面、何度も聴くうちにその良さがじわじわと分かってくるタイプの曲と言えるでしょう。

 

5:コイスルオトメ/★★★★★

 初々しさ満点のバラード。全編を通して感情を剥き出しにしたボーカルが見事で、特にサビの『好きだよ、大好きだよ』という力強い歌声が素晴らしいです。なんというか歌詞の1つ1つに込められた想いが、リスナーの心に突き刺ささるんですよね。デビューしたての勢いが表れた、名曲の一つでしょう。

 

6:流星ミラクル/★★★★★

 タイトル通り流星を題材にした曲で、メロディーや演奏が充実していますが、それ以上に歌詞が素晴らしいです。幻想的な夜空の描写や、固唾をのんで流れ星を待つ語り手の心境がしっかり描かれています。特に「もうすぐきっと奇跡がやってくる」や「運命の空を駆ける一筋の光」といった、ちょっと格好つけた表現がリアルに感じられる点が良いですね。

 

7:青春のとびら/★★★★★

 6に続いて、相変わらず質の高いポップソングが登場。イントロの浮遊感溢れるキーボードの音作りや、場面に合わせて叩きわけるハイハットの刻みなど、様々な工夫が見られます。歌メロもキャッチーで、3分と短い収録時間の中でも聴きどころが多いですね。

 

8:ひなげし/★★★★★

 題名は艶やかな花を持つ毒性の植物を指し、花言葉は「別れの悲しみ」「慰め」などがあるようです。悲恋を嘆くなげやりな歌詞が印象的な曲で、悩まし気な歌い方や妖しげなギターなど、本作の収録曲の中では異彩を放っています。そのため最初聴いた時はピンとこなかったんですけど、徐々に独特の雰囲気が癖になってきましたね。個人的には、本作の裏名曲だと思っています。

 

9:ホットミルク/★★★☆☆

 ハーモニカとバンドサウンドが絡んだロックソング。歌メロもそこそこ良いんですが、アルバム中に同系統の疾走曲が多く、ちょっと埋もれている印象。畳みかけるようなA~Bメロは良いんですが、サビが単調であまりノレないのがもったいないかな...(悪い曲では無いんですけどね。)

 

10:いろはにほへと/★★★★☆

 内側にたまった愚痴を吐き出すような歌詞が印象的な曲です。ただネガティブというより、むしろ開き直ってスッキリしているような心境なのかな。演奏面でもバンドの音数を最小限にして、ハーモニカを際立たせるような構成になっています。そのため全体的に牧歌的な雰囲気が漂っていて、僕的には結構好きですね。

 

11:うるわしきひと/★★★★★

 爽やかで品を感じさせる恋愛ソング。特にサビで多用されるファルセットが殊更美しく、聴いていて気持ちが良いですね。キャッチーな歌メロに加え、ボーカルの明るい声質や技術のおかげで、聴きやすくて飽きの来ない名曲になっています。

 

12:夏・コイ/★★★★★

 メンバー3人が入れ替わりながらボーカルをとっていて、吉岡がコーラスに回り、水野と山下がメインボーカルを分担する形式となっています。お手本のようなポップソングですが、男性陣2人の素人感溢れる歌唱が味わい深いです。またメンバー全員が楽しんでいる感じがして、聴いてるほうも楽しくなります。個人的には、キャンプしながら友達と歌いたい曲ですね。

 

13:タユムコトナキナガレノナカデ/★★★☆☆

 ストリングスを導入した王道のバラードソング。全体的にゆったりとしたメロディーラインとなっていますが、もう少しインパクトが欲しいところ。それでも吉岡の歌声が素晴らしく、特にサビの後の「Ah」の情感溢れる歌い回しが好きですね。

 

14:SAKURA -acoustic version-/★★★☆☆

 1曲目のアコースティック版ですが、個人的には切ない感じがより伝わるオリジナル版の方が好きですね。ただ、素材が良いので、弾き語りのみでも十分魅力的だと思います。

 

・作詞作曲:水野 良樹 2007年桜咲く街物語収録のコイスルオトメより歌詞を引用