なんでも音楽レビュー

音楽好きの凡人。アルバムの総評と1曲ごとの感想をメインに書いています。多くの曲を聴いたり書いたりして、隠れた名曲を発掘したい。「ここのメロディ良い!」とか「有名だけど私的には...」みたいな感想をメインに書くので、読んでくれた人が新たに良曲と出会ったり、少しでも共感してくれたら嬉しいなと思います。

【アルバムレビュー】A Kind of Magic

【作品概要】 

・タイトル:A Kind of Magic

・アーティスト:Queen  

・リリース年:1986年     

・収録曲:9曲/40:42

 

【総評】★★★★☆

 Queenの12thアルバム。

 フレディのボーカルが冴えわたっており、特に高音域における発声が以前より太くどっしりした印象です。まず2,5,6などのポップスやバラードでは、サビの高音域を余裕たっぷりに歌い上げており、オペラ歌手のような響きやビブラートがかかった発声には貫禄すら窺えます。また1,7,9のようなハードナンバーでは破壊力のあるシャウトを披露しており、曲の質を全体的に引き上げています。歌唱力でいえば本作がピークと言えるでしょう。

 フレディのインパクトが強い本作ですが、全体的には元来持つロックサウンドにThe GameのシンプルさやHot Spaceのディスコ風味が違和感なく溶け込んでおり、完全にQueenサウンドの一部と化しています。

 前述の1,2,5,6,7,9などの完成度の高い楽曲が並び、アルバム単位で見ても良作と言えるでしょう。

 

【各曲レビュー】

1:One Vision/★★★★☆

本作のオープニングを飾るロックナンバー。籠ったような独特なイントロに続き、ヘヴィなギターリフが切り込んできた時点で、一気にテンションがあがります。ギターとボーカルの主張が強く、特に「Give me your hands Give me your hearts I'm ready There's only one direction」の血管が切れそうなハイトーンが凄いです。硬派なロックソングですが、要所で入るシンセの効果もあり、爽やかな印象です。

 

2:A Kind of Magic/★★★★★

ロジャーによるアルバムの表題曲。浮き上がるようなベースラインやAメロのフレディの爽やかな歌唱もあって、クールな印象です。音数が少ないですが、要所で電子音が散りばめられ、摩訶不思議な魔法の世界を表現しています。一方ブライアンの見せ場もラストに用意されており、リズミカルで軽快なソロを堪能できます。シンプルですが程よくポップで没入感たっぷりな名曲です。

 

3:One Year of Love/★★☆☆☆

ジョン作のバラード。フレディの粘っこいボーカル、サックスを取り入れたアレンジ、まったりした曲調が相まってバラードというより演歌っぽいです。個人的には曲の雰囲気は良いんですが、スローテンポすぎて途中で飽きがくる印象...

 

4:Pain Is So Close to Pleasure/★★☆☆☆

ボーカルのほとんどでファルセットを使用しており、Cool Catと同じパターンの曲です。ブラックミュージック的な雰囲気が漂っていますが、フックに乏しいメロディが淡々と続いていく印象で、個人的にはいまいち。

 

5: Friends Will Be Friends/★★★★★

ジョン、フレディ共作のバラードナンバー。友人をテーマとした歌詞や暖かい雰囲気からYou're My Best Friendの1986年版と言えるでしょう。ディスコ系の曲が多かったジョンですが、改めてポップな曲を作るのが上手いと思わされる名曲です。ラストのサビメロが結構高いですが、声の太さや声量が申し分ないため、ポップな曲にも十分馴染んでいます。そして哀愁溢れるブライアンのギターも雰囲気作りに貢献しており、特にエンディングの泣きのソロが絶品です。

 

6:Who Wants To Live Forever/★★★★☆

オーケストラを取り入れたバラード。一部ブライアンがボーカルをとっており、これがシンフォニックな曲調とマッチしていてます。序盤の神秘的な雰囲気から徐々に熱を帯びていき、ラストサビでフレディの伸びやかボーカルが満を持して登場します。80年代以降パワフルな歌声が多い印象ですが、ここではオペラのような気品に満ちた歌声を披露しており、聴き応え十分です。

 

7:Gimme the Prize/★★★★☆

9と並び本作屈指の攻撃性を誇るロックナンバー。間奏のセリフ入りのパートがやや単調ですが、全編弾きまくりのギターと力任せにシャウトするボーカルが凄まじく、ねじ伏せてくるような印象です。特にサビの「Give me the prize  Just give me the prize 」の高音シャウトが圧巻です。

 

8:Don't Lose Your Head/★★★☆☆

シンセやドラムの質感がHot Space期を想起させ、ロックとディスコが合体したような曲です。随所で聴かれるフレディの力強いロングトーンが良いですね。個人的にはロック調だったり、ポップになったりと曲の雰囲気が頻繁に変わるため、掴みどころがない印象です。

 

9:Princes of the Universe/★★★★★

Queenのロックナンバーの中で一番好きな曲です。攻撃性は7と同等ですが、曲展開がしっかり練られているため、こちらに軍配が上がります。どっしりとしたパートと疾走感溢れるパートの使い分けにより、緩急に振り回されるような感じが良いです。フレディのシャウトを連発するボーカル、間奏のマシンガンのような速弾きギターソロ、緩急を支配した完璧なドラム等聴きどころ満載の名曲です。

 

・作詞作曲:Queen 1986年A Kind of Magic収録のOne Visionより歌詞を引用

・作詞作曲:Brian May 1986年A Kind of Magic収録のGimme the Prizeより歌詞を引用