なんでも音楽レビュー

音楽好きの凡人。アルバムの総評と1曲ごとの感想をメインに書いています。多くの曲を聴いたり書いたりして、隠れた名曲を発掘したい。「ここのメロディ良い!」とか「有名だけど私的には...」みたいな感想をメインに書くので、読んでくれた人が新たに良曲と出会ったり、少しでも共感してくれたら嬉しいなと思います。

【アルバムレビュー】I(いきものがかり)

【作品概要】 

・タイトル:I

・アーティスト:いきものがかり

・リリース年:2013年     

・収録曲:14曲/73:24

【総評】4.2/★★★★☆

 いきものがかりの6thアルバム。 

 個人的に良さが分かるまでに時間を要したアルバムです。理由としては、まず収録時間ですね。元々詰め込み気味の傾向はありましたが、今作ではついに70分を超えました。それに加えて、ストリングスを適度に取り入れたシンプルなバラードが多いんですよね。それ自体が悪いことではありませんが、アルバムを通して聴いた際に、各曲の良さに気づきづらかったです。

 ただ、質自体は相変わらず高いと思います。王道系の曲だと1、5、7、13を筆頭に良い曲が揃っています。また3、8、10、12などは個性に溢れていて、聴き込む毎に味わいが深まりました。その中でもイチオシは、ラストの14です。必殺の泣きバラードのわりに、アルバム内で埋もれてしまっているので、ぜひ聴いてほしい曲です。

 あとは余談ですが、ジャケットについてです。さすがにセンスが無いと感じるのは、僕だけですかね… メンバー全員ビジュアルが良いのに、左隅に遺影のように写されているのが不思議でたまりません。Iというロゴの上に、大きく3人の顔を載せれば良かった気がしますね(笑)。

   

【各曲レビュー】

1:笑顔/★★★★★

 如何にもJ-POP的な王道バラードです。印象的なリフレインのメロディーを様々なアレンジで聴かせてくれるのが良いですね。直近のライブでも「ララララララララ」と歌ってきたばかりなので、個人的にも味わい深いパートです。また、ラストにかけての盛り上げ方の上手さや、大団円を感じるエンディングなど、かなり気合を感じます。アルバムの締めに配置しても、十分機能しそうな曲だと思います。

 

2:1 2 3 〜恋がはじまる〜/★★★★☆

 爽やかさを重視した疾走ナンバーです。タイトルやサビの歌詞などが直球過ぎて「無難すぎるな...」と思っていましたが、そのシンプルさが良いなと最近思い始めてきました。音数を最小限にして空隙をストリングスやギターのクリーンなトーンで埋める手法がハマっている印象ですね。清涼感のある良曲です。

 

3:ぱぱぱ〜や/★★★★☆

 タイトルで独特なサビを連呼する怪しげな曲がきました。"-"ではなく"~"なのがミソで、節回しを的確に表しています。ベースを際立たせたイントロしかり、ジャズ調なのに元気があったり、「ちょ、ちょ、ちょっと」などの歌い方など、1つ1つのインパクトが強いです。毎回この手の曲がアルバムに収録されていますが、中毒性の強さは相変わらずですね。

 

4:恋跡/★★★☆☆

 素朴な雰囲気のバラードです。起伏の少ない地味な着想ながら、不思議と琴線に刺さるメロディーを持っています。特にサビの「「簡単」なんて思えないの、いくつかの恋をしてみたけど」の部分の切ない感じがグッときました。上手く纏まった佳曲だと思います

 

5:ハルウタ/★★★★★

 劇場版名探偵コナン11人目のストライカー」の主題歌です。公開時は熱心にコナンを見ていた時期で、映画館で曲を聴きましたね。当時のいきものがかりは、ブーム期からやや落ち着いてきた頃でしたが、相変わらず良い曲だなと思ったのを覚えています。

 切ないピアノの旋律とゆったりしたサビメロで始まるので、最初はバラードだと思うのですが、次のパートからテンポが上がるので「おっ」と思わせてくれます。疾走しつつも、一抹の切なさを感じさせる点が素晴らしく、初期への回帰を感じさせます。他にもサビ直前でドラムを一瞬ブレイクさせる演出が見事です。Aメロからメロディーに勢いがあり、少し疲れてきたところで上手く場面転換をしています。

 

6:マイサンシャインストーリー/★★★★☆

 彼らが得意とする爽やか系のポップナンバーです。言葉数を詰め込んだメロディーが上昇していくサビメロですが、徐々に感情が高ぶっていく様子が表現されていて、ボーカル吉岡の長所がしっかり活かされています。個人的には、Bメロの「かーさなり合う季節が僕の物語を繋ぐ」の色つき部分が好きです。何気ない高音の発声なんですけど、フックがあって印象的なんですよね。

 

7:なんで/★★★★★

 4と同じ失恋をテーマにしたバラードです。前者よりもポップなメロディーや「なんで」と繰り返す歌詞がとても印象的です。それと、あえて穏やかな歌い方をしている点も素晴らしく、思い出を自嘲気味に振り返る心境をしっかり表現していると思います。切なさが漂う名曲ですね。

 

8:あしたのそら/★★★★☆

 弦楽器(バイオリンかな?)とハーモニカを織り交ぜたアレンジが新鮮なポップナンバーです。特に希望に満ちた感じのイントロや、2番Bメロで歌に代えてリードをとるパートが印象的ですね。ポジティブかつ高貴な雰囲気作りに貢献していると思います。アルバムの中でも個性が垣間見える良曲です。

 

9:風乞うて花揺れる/★★☆☆☆

 ゆったりとしたバラードです。サビメロを長めに取り、しっかりと歌詞を聴かせるタイプの曲で、直近だと前作収録の「心の花を咲かせよう」に似ています。ただ肝心のサビが弱いうえに、曲自体も6分弱なので、かなり間延びしているように感じます。もう少しコンパクトに纏まっていれば★4くらいだと思うので、もったいないですね。

 

10:MONSTAR/★★★★★

 「じょいふる」を彷彿とさせるアップテンポな曲です。前者は癖が強すぎて少し苦手だったんですが、この曲は程よくポップに仕上がっていて、一発で好きになりました。何だかよくわからないけど、聴いていると無性にワクワクする曲だと思います。個人的に、サビ終わりで「わうぉ」とシャウトするところが可愛らしくて好きですね。

 

11:恋愛小説/★★★☆☆

 4thアルバム収録の「秋桜」を彷彿とさせる渋いバラードです。前者では投げやりな感情を歌にはっきり出していた印象ですが、本曲は比較的抑えめなので、とても硬派に感じますね。個人的には、もう少しキャッチーさが欲しいと思いますが、趣十分の佳曲だと思います。

 

12:東京/★★★★★

 夕暮れ時の東京の情景に草臥れた人の心理描写を重ねたバラードです。無骨で男っぽい雰囲気が、エレファントカシマシっぽいなと感じました。「Oh Journey」の部分の節回しや、いぶし銀のようなギターソロなどが、とにかく渋みがあって素晴らしいです。全体的にはいつも通りの王道なアレンジですが、その中でも個性が光る名曲だと思います。

 

13:風が吹いている/★★★★★

 いきものがかり史上最長となる7分超えのバラードです。オリンピックのテーマに選ばれた曲で、大衆人気が全盛だった時代の末期にリリースされた印象があります。

 とにかくスケール感が桁違いの名曲という感想が最初に浮かびましたね。冒頭のアカペラから華のあるギターソロに雪崩れ込むイントロからして違います。そこからサビを含めてゆったりと展開していき、吉岡の豊かなロングトーンを活かしたエンディングで終幕となります。上手く言えないんですけど、全編に渡って風格が漂い、とにかく圧倒されました。当時、敵無しだった頃の勢いを感じる名曲です。

 

14ぬくもり/★★★★★

 アルバムの締めとなるバラードです。13の後ということでハードルが高そうですが、それを軽く超えてきましたね。とにもかくにも、極上のサビメロが素晴らしく、泣きを誘います。ここまで琴線に触れる旋律は中々ないので、初めて聴いた時は嬉しかったですね。彼らが作ったバラードの中でもトップ5には入る名曲です。

 

・作詞作曲:水野良樹 2013年I収録のぱぱぱ〜やより歌詞を引用

・作詞作曲:山下穂尊 2013年I収録の恋跡より歌詞を引用

・作詞作曲:山下穂尊 2013年I収録のマイサンシャインストーリーより歌詞を引用

・作詞作曲:水野良樹 2013年I収録のなんでより歌詞を引用

・作詞作曲:水野良樹 2013年I収録のMONSTARより歌詞を引用

・作詞作曲:吉岡 聖恵 2013年I収録の東京より歌詞を引用