なんでも音楽レビュー

音楽好きの凡人。アルバムの総評と1曲ごとの感想をメインに書いています。多くの曲を聴いたり書いたりして、隠れた名曲を発掘したい。「ここのメロディ良い!」とか「有名だけど私的には...」みたいな感想をメインに書くので、読んでくれた人が新たに良曲と出会ったり、少しでも共感してくれたら嬉しいなと思います。

【アルバムレビュー】ハジマリノウタ(いきものがかり)

【作品概要】 

・タイトル:ハジマリノウタ

・アーティスト:いきものがかり

・リリース年:2009年     

・収録曲:13曲/66:16

 

【総評】4.2/★★★★☆

 いきものがかりの4thアルバム。 

 この辺りから大衆への認知度が上がり、シングル4,5のヒットもあり、国民的なアーティストに近づいていった印象があります。

 肝心の内容についてですが、以前より即効性は薄い印象ですね。特にバラードが多い7番以降の曲は、好きになるのに少し時間がかかりました。ただこれらは、聴きこむ度に良さが分かってきて、「結局、いつもどおりの素晴らしい曲だな」という感想に落ち着きましたね。

 個人的には4、6、9のようなマイナー調のバラード、哀愁度maxの9、涙腺を刺激する12、13が特に好みです。

 最後に余談ですが、ジャケットについてです。いつもは、ご機嫌な表情で写っていたはずですが、本作は雰囲気がかなり異なります...どういう意図かは読み取れませんが、もしすると、若さを前面に押し出した作風からの変化を示しているのかもしれません。

  

【各曲レビュー】

1:ハジマリノウタ〜遠い空澄んで〜/★★★★★

 非シングル+表題曲+1曲目と名曲属性?が高いですが、それに応える極上のバラードです。シンプルなバンドサウンドで始まり、Bメロの終わりで、ストリングスが登場します。ここが本当に絶妙で、ドラマチックさが増したところで、吉岡の澄んだ歌声がサビメロをなぞります。この一連の流れが素晴らしすぎて、毎回鳥肌が立つんですよね。未聴の方は、ぜひ上記を意識して聴いてみてほしい名曲です。

 

2:夢見台/★★★★★

 バンドサウンド+ハーモニカーという、彼らの王道ポップソング。特徴としては、「KIRA★KIRA★TRAIN」のような曲と比べて、メロディーから切なさや懐かしさを感じない点です。そのため勢いやリズム感の良さがダイレクトに伝わり、彼らにしては若干ハードな仕上がりです。ハードロックも大好きな僕からすると、こういったアレンジは大歓迎です。

 

3:じょいふる/★★☆☆☆

 エネルギッシュで、勢いに100%全振りした曲です。前曲をハードと評したばっかりですが、その比にならないレベルで暴走していますね笑。ただですね...実は、あまりハマれなかった曲でもあります。勢いのわりにノリの良さが感じられないのと、癖のある歌い方が好きになれなかったんですよね...世間的な評価は高そうですけど、意外と賛否両論の曲だと思います。

 

4:YELL/★★★★★

 卒業ソングの定番で、僕が小学生だった時も、授業で取り上げられていました。改めて聴くと全体的に湿った雰囲気があって、春よりも秋が似合うという印象です。また要所で奏でるエレキが絶妙ですね。特にエンディングに入る泣きのメロディーが素晴らしく、最後まで世界観を維持している点に好感が持てます。

 

5:なくもんか/★★☆☆☆

 シングルにもなったバラードですが、個人的にはイマイチです...メロディーも聴きやすく、アレンジも王道なんですが、逆にそれしか無いんですよね。歌詞も抽象的な綺麗事が多くて、正直苦手です...悪い意味で売れ線の曲という印象なので、何か心に引っかかるものが欲しかったですね...

 

6:真昼の月/★★★★☆

 編曲にセンスが感じらるバラードです。特に月光ピアノソナタを想起させる暗めのイントロや、エンディングで一瞬登場する琴?の音色など、印象的なパートが多いです。メロディーが少し弱いのが気になりますが、マイナー調の暗さや美しさが表れた佳曲だと思います。

 

7:ホタルノヒカリ/★★★★★

 「SHA LA LA」で始まるサビが印象的なシングル曲です。蛍が飛び交う夏の夜を想起させる歌詞が見事で、アップテンポな曲なのに情緒を感じさせます。特に「逢いたくなるの「衝動」哭きたくなるの「純情」夏の火に飛び込んだ ホタルはかえらない」の一節が味わい深くて、気に入っています。

 

8:秋桜/★★★★☆

 寂し気なハーモニーカーがフューチャーされており、木枯らしが吹く晩秋のイメージが強い曲です。歌詞もやや鬱屈としていて、過去の曲だと「ひなげし」や「ニセモノ」とテイストが似ていますね。また歌についてですが、「離れぬま 届かぬま」の部分が好きです。同じメロディーですが、語尾を地声と裏声に使い分けることによって、感情の起伏を上手く表現していると思います。

 

9:ふたり -Album version-/★★★★★

 切ないサビメロが印象的なバラードです。徐々に憂いを帯びていって、サビで一気にマイナー調の雰囲気に変わるメロディー構成が見事ですね。またサビの「抱きしめても抱きしめても」部分の感情的な歌い方が素晴らしくて、聴く度に心を鷲掴みにされたような感覚になります。

 

10:てのひらの音/★★★★★

 1stの「夏・コイ」以来の、メンバー全員が歌うポップナンバー。A~Bメロで男性陣が主にボーカルをとり、それまでメインボーカルの吉岡はコーラスに徹していますが、サビになると「私の出番よ!」と言わんばかりにウキウキとした歌唱を披露してくれます。そして最後は、全員でサビを大合唱して終了です。とにかくメンバー全員が楽しんで歌を入れている感じがして、聴き手もつられて微笑んでしまうような曲です。

 

11:How to make it/★★★☆☆

 ラップを思わせる叩きつけるような歌い方が特徴的な曲です。演奏面でも随所でベースラインを強調したり、籠ったようなドラムの音質など、やや風変わりな印象です。まあ悪い曲ではありませんが、少しメロディーが弱いですかね...

 

12:未来惑星/★★★★★

  鈴の音を思わせるアコギが印象的なバラードです。これが本当に素晴らしく、初夏の日差しを浴びながら、優しい風を受けている情景がはっきり浮かびます。一方メロディーのほうは、Bメロの「まわる まわるの輪になって」の部分が切なくて良いですね。サビがやや単調という弱点がありますが、それを相殺するくらい雰囲気が好みなので、迷わず★5をつけた曲です。

 

13:明日へ向かう帰り道/★★★★★

 ストリングスとアコギをメインに構成されたバラード。旅が終わり、家路につく心境を表した歌詞がアルバムの締めにピッタリです。上手く言えませんが、楽しい時間が終わった直後の切ない感情が、自然と湧いてきます。派手さはないものの、とても味わい深い名曲だと思います。

 

・作詞作曲水野良樹 2009年ハジマリノウタ収録のふたり -Album version-、ホタルノヒカリより歌詞を引用

・作詞作曲山下穂尊 2009年ハジマリノウタ収録の秋桜より歌詞を引用

・作詞作曲吉岡聖恵 2009年ハジマリノウタ収録の未来惑星より歌詞を引用