なんでも音楽レビュー

音楽好きの凡人。アルバムの総評と1曲ごとの感想をメインに書いています。多くの曲を聴いたり書いたりして、隠れた名曲を発掘したい。「ここのメロディ良い!」とか「有名だけど私的には...」みたいな感想をメインに書くので、読んでくれた人が新たに良曲と出会ったり、少しでも共感してくれたら嬉しいなと思います。

【アルバムレビュー】The Miracle

【作品概要】 

・タイトル:The Miracle

・アーティスト:Queen  

・リリース年:1989年     

・収録曲:10曲/41:22

 

【総評】★★★★☆

 Queenの13thアルバム。

 まずフレディのボーカルがやや変化がした印象です。初期の軽やか高音ボーカルからパワフルなボーカルにシフトしてきたフレディですが、本作ではしゃがれたような枯れかかったような発声が増えました。これがロックテイストの楽曲に対して相性が良く、1,2,4,6,10などのハードナンバーが滅茶苦茶格好良いです。

 またシンセを用いたアプローチも板につき、神秘的な3、怪しげな5、癒し系の7などの出来が良く、アルバムトータルでみても高いクオリティを維持しています。

 最後に、本作の製作前後からフレディの身体に、HIV感染による影響が出始めたと言われています。その影響かラストナンバーは、過去形で綴られた歌詞など、明らかに死を意識した内容となっています。全体的には明るい作風ですが、10の緊迫感が凄まじく、聴くたびにフレディの死というものを実感させられますね。

 

【各曲レビュー】

1:Party/★★★☆☆

ノリのいいロックナンバー。ブライアンのギターリフに合わせて入る「Let's party」や「Yeah」などの掛け声がとても楽しそうです。特筆すべき点はあまり無いんですけど、パーティーで大騒ぎしている様子が目に浮かびます。

 

2:Khashoggi's Ship/★★★★☆

前曲から間髪入れずに再生されるロックナンバー。ノリの良さやパーティー関連の歌詞など1と同じ雰囲気です。個人的には1より2のほうが好きですね。1よりもドラムに躍動感が増し、テンションが一段と上がったような感じです。

 

3:The Miracle/★★★★★

クラシカルなシンセの音が印象的なポップナンバー。加えて流麗なギターの音色が歌メロの隙間を埋めることにより、何とも言えない神秘的な雰囲気を形成しています。フレディの歌い方も気品漂う感じで、しっかり曲とマッチしているのが良いですね。個人的には、QueenⅡのホワイトサイドを彷彿とさせるようで、とても気に入っています。

 

4: I Want It All/★★★★★

しゃがれたボーカルが印象的なロックナンバー。フレディのおじさん臭い声とヘヴィなギターリフの組み合わせが滅茶苦茶渋いです。サビの「I want it all  I want it all」とひたすら繰り返す感じが、重厚な雰囲気に一役買っています。静かに闘志を燃やすようで格好良いですね。

 

5:The Invisible Man/★★★★☆

電子的なベース音が特徴的なゲームのサントラに入ってそうな曲。ボーカルの囁くような歌い方やピロピロした感じのギターソロも曲にマッチしており、透明人間の怪しい感じが出ています。好き嫌いが分かれそうな曲ですが、個人的には独特の世界観が結構好きですね。

 

6:Breakthru/★★★★★

枯れかかったフレディのボーカルが味わい深いロックナンバー。近年は4のようなギターリフがぎっちり詰まった重厚感のある曲が続いていましたが、こちらは全体的に音数が少なく、軽やかで爽快感溢れる仕上りです。間奏では、クールなベースソロから疾走感のあるギターソロを経て、ラストサビに雪崩れ込む構成が素晴らしく、聴いていて気持ち良いです。

 

7:Rain Must Fall/★★★★☆

落ち着いた雰囲気のポップナンバー。ポコポコしたパーカッションや遊び心に溢れた効果音が印象的です。特にイントロが終わり、ベースが入ってきた直後の「アーっ」という効果音がクスッと笑える感じで好きです。ボーカルも力が抜けた感じで、Queenにしては珍しい癒し系の曲ですね。

 

8:Scandal/★★★☆☆

マスコミへの怒りを歌ったロックナンバー。正統派の楽曲ですがメロディやアレンジがQueenにしては無難ですね。悪い曲ではありませんが、全体的に淡々としていて、個人的には飽きがきやすい印象です。

 

9:My Baby Does Me/★★★☆☆

Hot Space収録のCool Catを渋くアレンジしたような印象の曲。落ち着いた雰囲気で特筆するべき点はそこまでありませんが、規則的に繰り返されるジョンのベースと粘っこいギターの絡みが良いですね。

 

10:Was It All Worth It/★★★★★

切り裂くようなギターリフと随所に導入されたオーケストラが合わさったプログレチックなロックナンバー。制作時点でフレディ自身がHIV感染を認識していたらしく、これまでの人生が価値あるものだったかを自問する歌詞が印象的です。これに対して「yes It was a worthwhile experience」と言い切り、高笑いをあげるラストが鳥肌モノです。死を意識しながらも、憎たらしいほど自信満々に歌われるこのパートは、何度聴いても体が震えます。

 

・作詞作曲:Queen 1989年The Miracle収録のParty、I Want It All  、Was It All Worth Itより歌詞を引用