【作品概要】
・タイトル:The Works
・アーティスト:Queen
・リリース年:1984年
・収録曲:9曲/37:11
【総評】★★★★☆
Queenの11thアルバム。
前作で大々的に使用したシンセが控えめになり、ロックバンドとしての色が強まった印象です。特にドラマチックな3,7は、初期の名曲に通づる良さがありますね。対照的に1,5では、各の特色に合わせてシンセが効果的に使われてる印象です。シンセ自体も曲にしっかり溶け込んでいるため、いい意味で目立たなくなっています。
フレディの高音域も、以前より太さを増しており、ハードな2,5,8などで聴かれるパワフルな歌唱は圧巻です。
また1曲ごとの質が高いのが良いですね。文句無しの名曲1,3,8を筆頭に2,7,9などの良曲尽くしで全体的なクオリティが底上げされています。やや収録曲が少ない気がしますが、聴き応えのある良作と言えるでしょう。
【各曲レビュー】
1:Radio Ga Ga/★★★★★
前作Hot Space での実験的なアレンジが上手く作用したロジャー作の名曲。エレクトリックなベース音やシンバルに被さるシンセ等の効果音が見事で、PVに映る近未来SFの世界を音だけで表現しきっています。またサビの有名な「All we hear is radio ga ga Radio goo goo Radio ga ga~」の部分は中毒性があって一度聴くと忘れられないですね。そしてラストのブライアンのギターソロも良いです。控えめなロングトーンを中心に作られており、ほんのり郷愁を感じさせるような質感が気に入っています。Queenの中でも、全ての音がぴたりと嵌まったような完成度の高い曲だと思います。
2:Tear It Up/★★★★☆
We Will Rock Youを豪華にしたような曲で、ドラムのドン・チャというリズムにのせてブライアンのギターが暴れまわるイントロから盛り上がります。サビは短い文章をひたすら叫ぶシンプルな構成ですが、力強いフレディの声とQueenお馴染みのコーラスが被さり、迫力満点です。またコーラスは、ブライアンの声が若干強めに録音されているように感じます。そのため分厚いながら切ない成分が混じったような質感になっていて、野太いフレディの声との相性が良く、聴きやすい印象です。
3:It's A Hard Life/★★★★★
フレディ作のバラード。物悲しいピアノにファルセットを随所に取り入れたボーカルが被さる序盤から、情感がのった力強いボーカルを堪能できるサビまでの構成が見事で、静から動への感情の動きがしっかり表現されています。その間の演奏もシンプルで、フレディの歌を引き立てているのが良いですね。そして2番サビ後に満を持してギターソロが入りますが、間の取り方や溜めなどがしっかり練られた泣きのソロといった感じで、Queenの中でもトップクラスだと思います。
4:Man on the Prowl/★★☆☆☆
Crazy Little Thing Called Loveと同系統の曲。こういったロビカリー風味の曲は好みではないので、まあまあといった印象です。ただ軽快なピアノやしっかり抑揚がついたボーカルが聴けることもあってか、前述の曲よりはポップですね。
5:Machines (or 'Back to Humans')/★★★☆☆
シンセのピコピコ音や機械による合成音声が挿入されており、ハードロックにテクノ的要素が混じっています。効果音による印象が強く、工場でマシーンに囲まれていると錯覚するような雰囲気作りが見事です。間奏以降、ややダレてしまいますが玉に瑕ですが、フレディのパワフルな歌い回しが映える佳曲と言えるでしょう。
6:I Want to Break Free/★★★☆☆
ジョン作のポップナンバー。牧歌的なキーボードやシンセを使用したソロパートの印象が強く、バンド感は薄いですね。フレディのソロ曲と言われても納得しそう。良い曲だとは思うんですけど、もう少しギターの音が欲しいかな...個人的にはサビ前に一瞬キレのあるギターが入り、「It's strange but it's true~」とフレディの情熱的なボーカルが入るパートが熱くて好きですね。
7:Keep Passing The Open Windows/★★★★☆
フレディ作のロックナンバー。冒頭の「This is the only life for me (yeah) Surround myself around my own fantasy」を初めて聴いた時は、すぐに良曲だと確信しました。この哀愁漂うドラマチックなメロディは繰り返され、終盤のギターソロにも使用されており、Queenのメンバーも相当自信があったと思います。ややエンディングがダレますが、軽快でリズミカルな部分と前述したドラマチックな部分のメリハリがついた良曲です。
8:Hammer to Fall/★★★★★
ブライアン作のロックナンバー。ヘヴィなギターリフとフレディの熱唱が格好良い名曲。随所にお馴染みの美しいコーラスが入り、一種の清涼剤として機能しています。ハードな曲でも熱苦しい感じがあまり無く、爽やかなのがQueenらしいですね。個人的には、Cメロの「Rich or poor or famous For your truth is all the same~」の部分の盛り上がりが、サビよりも好きだったりします。また間奏でドラムロールが印象的な重苦しいパートから、流麗なギータソロが疾走するパートにつながる構成が、雲間から日が差し込むような清々しい感じがして好きですね。
9:Is This the World We Created...?/★★★★☆
アコギとフレディのボーカルのみで作られた、物悲しい雰囲気のバラード曲。短くシンプルな弾き語りであるが故に、フレディの歌唱が際立っています。特に切ないサビメロは、グサッと胸に刺さるような感覚です。また随所に登場する憂いのある低音が印象的で、深みのある歌声を堪能できます。こういった陰のある歌い方も魅力的ですね。
・作詞作曲:Roger Taylor 1984年The Works収録のRadio Ga Gaより歌詞を引用
・作詞作曲:John Deacon 1984年The Works収録のI Want to Break Freeより歌詞を引用
・作詞作曲:Freddie Mercury 1984年The Works収録のKeep Passing The Open Windowsより歌詞を引用